一般的に、男という生き物は何においても順位付けをしてしまうものだと言われています。小さい頃は足の速さや腕っ節を競い、大きくなったらなったでまたいろんなものを競います。「長さ」とかの下方面に行っても構いませんが、話が膨らまないんでそっちには進みません。「膨らむ物」の話が膨らまないとは是如何に。

足の速さや腕っ節ですと本人の努力でなんとでもなります。しかし、本人とは関係ない外的要因で順位付けをされてしまうと自分の力ではどうにもなりません。黙って耐え忍ぶしかありません。私が子供の頃は、その順位付けの材料に黄道十二宮、いわゆる誕生星座が使われた事がありました。とは言っても「今日の一位はさそり座、最下位はうお座」なんていう毎日変動するような基準ではありません。全てはある漫画によって決められていました。

「聖闘士星矢」という漫画では、作中において十二人のとても強い敵キャラが出てきました。その十二人それぞれが誕生星座と関連するキャラとなっていたため、当時の子供達は自動的にキャラを割り振られていたのでした。「俺はおひつじ座だからこいつ」とか、「俺はみずがめ座だからこいつ」といった具合に。

作中において最も優遇されていたのはいて座でしょう。物語序盤から主人公サイドの味方として登場していたいて座。最初から最後まで欠かせないものでした。その次にいい扱いを受けていたのはおとめ座とてんびん座あたりでしょうか。「十二人の中で最強」と評されるおとめ座、そして初期はともかく終盤の重要人物として登場したてんびん座。どちらも扱いのよさではひけをとりません。

優遇されるキャラがいれば、当然ながら冷遇されるキャラもいます。その最たるものがかに座でしょう。どう見てもギャグキャラ。どう見ても弱い。どう見ても悪人。擁護のしようがない扱いに、かに座の少年達は間違いなくこの漫画の作者を恨んだ事でしょう。他に冷遇されていたといえばおうし座とうお座でしょうか。かませ犬的扱いだったおうし座、そしてどうにもカマ臭かったんで小学生男子的に受け入れ難かったうお座。どちらも当時の少年達に暗い影を落としました。まあ私はてんびん座だから関係ないんすけどね。

ちなみに現在、とある週刊少年漫画誌でリメイク版と言いますか、スピンオフ作品が連載されています。そちらの作中では、既に絶命しているとは言えかに座のキャラは大活躍でした。デスマスクの扱いの惨さに涙を呑んだ当時の少年達には、ぜひともマニゴルドの活躍ぶりを見てほしいものです。あと、該当部分は読んでないんですがうお座もちゃんと活躍したらしいですよ。おうし座は、まあそういう扱いです。頑張れ。いや「酷い扱い」という程じゃないけど、それでも優遇はされてなかったなあ。

あれから二十年もの時が流れ、かに座の扱いも多少はよくなるはずでした。しかしながら、近年新たにかに座迫害の原因となりうるものが現れています。「流星のロックマン」というゲームです。こちらも二十年も前から続く「ロックマン」というゲームのシリーズ。泣く子も黙る高難易度アクションということで、当時から人気のあるゲームです。本家筋であるアクションゲームも昨年最新作が発売となりましたが、分家筋である「流星のロックマン」シリーズはアクションRPGとして、こちらも昨年最新作が発売されています。「流星のロックマン1」は中古ゲーム屋や玩具売り場の棚で千円未満の値段で売られている姿を見かけた方もいるかもしれません。これは決して質が悪い、所謂「クソゲー」であったわけではなく、どうも聞くところによると出荷量が多すぎてダブついてしまった為にこんな財布に優しいお値段になってしまったんだそうです。

この「流星のロックマン」。「流星」という名の通り、登場キャラや設定の一部に星座関連のあれこれを使用しています。ヒロインの一人はこと座をモチーフにしたキャラになっていますし、シリーズ一作目のキーキャラクターとしてはペガサス座、しし座、りゅう座が出ています。聖闘士星矢世代の人間としては、「星矢」「紫龍」ときて何故「アイオリア」なのだと突っ込みたくなります。しかし、これは「そういうもの」だと割り切らなければならないようです。「何故、青銅二人と黄金一人の組み合わせなんだ」と言ってはいけません。そもそもその分類をいつまでも続ける方に問題があるのですから。もう青銅だの白銀だの黄金だの、そういう分類はやめましょう。黄道十二宮が偉いわけではないのです。ユニコーン座よりペガサス座が偉いわけでもないのです。みんな同じ星座。みんな平等。それで問題ないじゃないですか。

しかし、それでもやっぱり自分の星座がどういう扱いなのかというのは気になります。例えばおうし座。かつては偉大なるかませ犬であったおうし座。舞台を変え、そして時代も変わり、その扱いはどう変わったか。正解は「やっぱりかませ犬」でした。シリーズ一作目の記念すべき最初のボスとして登場するおうし座モチーフのキャラ。「最初のボス」って事は、つまり弱いわけです。なお、キャラ設定上「力は強いが頭は弱い」となっています。嗚呼おうし座、いつになってもその扱いは変わりません。

そして、牛と並んで迫害されていた蟹。かに座はどうなのか。かつて「のりピー語を操る黄金聖闘士」として酷い扱いを受けていましたが、こちらはどう変わったか。正解は「完全にお笑い担当」。ゲーム本編でどうなのかは分かりませんが、アニメでは立派にお笑い担当です。多分、本編でも大差ない扱いでしょう。しかも、「主人公達に何度もちょっかいを出しに来て、あっさり返り討ちにあう」という扱いなんで、その強さも難有りです。ちなみに、ゲーム内の設定では火属性の牛、水属性の蟹という事で、「牛と蟹の一騎打ちなら蟹勝利」という事になっています。それがどうしたと言われればそれまでですが。

十二星座のうち半分程度しか登場していないとはいえ、かに座の、そしておうし座の扱いはこんなもんです。かつて、私が小学生の頃と似たような光景を今の小学生も見ているのでしょうか。そして、おうし座の名誉回復はいったいいつになるのでしょうか。
頑張れおうし座。
頑張れアルデバラン。
頑張れオックス・ファイア。


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