ほぼ一年前、昨年の十月八日は友人林某の結婚式だったわけですが、今年の十月七日は友人田某の結婚式でした。何も二年連続でやらなくても、と思いながらも今年も出席です。幸い、今年は既に保育園の運動会も終了しており、翌日の心配はありません。安心して最後まで付き合う事ができます。

招待状の中に「チャペルでいろいろやるから二時半までに集合よろしく」という紙が挟まれていたので、余裕を持って二時頃に到着するようにします。昨年同様、友人数名と共に式場へ。なんとか間に合いましたが様子が変です。誰もいません。おかしい、みんなどこにいるんだと、フロントに尋ねてみたところ「チャペルでは三時に予定が入っています」という回答が。あれか、紙切れには「(三時の三十分前である)二時半に来てね」と書いてあり、それを「じゃ、三十分前に到着しよう」と解釈したのが間違いだったのですね。結果として一時間も早く着いちまったよ。どうすんだよ。

途方に暮れつつ、ブラブラしつつ、チャペルを覗いてみようと移動したら迷子になって、とぼとぼとロビーに戻ってきた私を呼び止める声がありました。識別に若干の時間を要しましたが、声を掛けてきたのは私の高専時代からの女友達である杉某でした。新郎友人ばっかでむさ苦しい場に、ようやくむさ苦しくない人間が現れてくれました。もっとも、直後に林某夫妻やら、また別の友人夫婦やらと合流して、むさ苦しい指数は急激に下がっていったのですが。

今回の新郎である友人田某。私と彼との繋がりは、「中学校の一年と二年の時、同じクラスだった」という点のみです。えらい薄い繋がりですが、それでも今まで付き合いがあるわけです。薄かろうが細かろうが、十年も続けばそれは立派な縁です。今回新郎友人として招待された面々は、小学校、中学校からの友人連中が殆ど。十年以上、場合によっては二十年以上も付き合いがあるわけで、ここまで続くと多分墓場に行くまで付き合いがあることでしょう。だって、『幼稚園から中学校まで一緒で、途中が空いて職場が一緒』なんて奴もいるんだもん。どんな腐れ縁だ。

そこにひょっこり現れた友人杉某。彼女とは高専時代からの付き合い。こちらもかれこれ十年を数えます。彼女は我々とは小学校も中学校も違います。何故同席しているのかと言うと、こちらは新婦の友人。という事で、ややこしい話ですが今回の結婚式とは「友人の友人が、友人と結婚する」わけです。世の中、どんなとこで繋がっているか分かったもんじゃありません。

披露宴そのものはつつがなく終了したので割愛。いたって普通の披露宴でした。招待客三桁が「普通」と言うのなら、ですが。当初原案では新郎が「どう考えても二百人になる」とか言ってたそうです。仕事上の付き合いやら、趣味の付き合いやら、その辺を考慮するとどうしてもそれくらいの数になる、と。繋がりが多いのも良し悪しですが、最終的には無理矢理削りに削ったとの事。それでもまだテーブル数が二十を超えてたりしました。

披露宴がつつがなく終了し、そしてつつがなく始まる二次会。幹事である友人の手伝いをしたり、飽きもせずに果物を食べたり、人妻が語る旦那の愚痴に耳を傾けたりと、それなりにうろちょろしていました。そんな私を呼び止める声がします。が。その声の主に見覚えがありません。ありませんと言うか、どう見ても年上の方です。察するに新郎の職場の上司とかそんな感じ。しかし、私の名前を、苗字でなく名前をピンポイントで呼んできます。という事は何らかの知り合い、しかし見覚えはない、一体誰だ。たっぷり五秒は考え込み、向こうが諦めて自己紹介してきました。実家のご近所の方でした。分かるかそんなの。聞くところによると、異動やら何やらで現在は私の友人の同僚だとか。成る程、それからしばらく後に、その同僚二名で何かを話している姿を見かける事がありました。しかしまた、妙なところで思わぬ繋がりがあるものです。

それから二次会も終わり、三次会も終わり、新郎もへべれけとなってお開きの時間です。飲酒運転に厳しいご時世ですが、それを見越して私を含む二名が飲酒せずに車を準備しています。出席者の大半はこの二台に分乗、全員がそれぞれの実家に戻るということなので送っていく最中の事です。私の車には友人杉某を含む新婦ご友人が合計三名。私の友人連中の実家は既に通い慣れているので夜中であっても道に迷う心配なんかはないのですが、初対面の方々は当然どこに送り届ければいいかわかりません。そんなわけで本人のナビに従い、そこを右いやその先を右いやいや手前を右とかやっていました。

ここを右というと、○○幼稚園の前あたりですか。
「そうそう。よく知ってるね」
いやいや、あそこの卒園ですから。
「あ、私も」

ちょっと待て。それはつまりあれですか。二十年位前に何らかの接点があったわけですか。いや、結局名前に聞き覚えが無いという事は実際のところは接点なんてものは全く無かったんでしょうが、それでも「同じ幼稚園」という事実は存在し、さらに一度ならずとも顔を見かけたことはあるでしょうし。それにしても、最後の最後でえらく古い繋がりが出てきたものですが、意外な接点に驚くべきか、それとも交友範囲の狭さに笑うべきか。交友範囲も広けりゃいいという訳ではありませんが、こうも狭いと他にも何か出てきそうでねえ。


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