引越し以来、何かと物入りな日々が続いております。特に被服関連が。今まで専業主婦として家事と育児を一手に引き受けていた奥さんが、引越しを機にとある会社で契約社員として働き出したのが原因の一つです。

「面接を受けるからスーツが必要」とか、「毎日着ていく服が必要」とか、「冷房が寒いからショールが必要」とか。どれもこれも必要経費なんで削るわけにもいきません。それにしても、仕事する女性の服装というのはいろいろと難しいようです。毎日同じ服を着るわけにもいかないとか、これはちょっと派手すぎるからもうちょっと地味なのでもこれはかわいくないいやんいやんとか、制約や注文が多くて大変です。なんだかんだで何度も服を買うためにお買い物に付きあわされましたし。ああ、別に服屋に行って「こっちとこっちとこっちのどれがいいか」などと聞かれるわけではなく、運転手役と子守役と、あと荷物運びをしただけです。

その点、男性は楽と言えば楽です。スーツの上下はある程度連続して着用しても問題なく、あとはネクタイとシャツを適当に選べば無難にできあがりです。よっぽどな見た目でもなければ、あとは洗濯やクリーニングの間隔を気にする程度で済みます。シャツのような消耗品はともかく、スーツそのものは数年間は着ていられるわけで、やっぱり気楽です。流行り廃りを気にしなくていいんですから。その点でも女性は大変でしょう。「今年はフリルがどうのこうの」と言ってても、来年は流行遅れになってまた新しく買い直さないといけないんでしょうから。って事は、来年もまた買い物道中が繰り広げられるのですか。

そんな塩梅でいつものスーツを着ていたわけですが、引越し前後でそのうちの一着が困ったことになってしまいました。右膝の部分が擦り切れてシースルーになっているのです。正座したまま畳の上を激しく前後に動いたりしたわけでもありませんので、経年劣化したのでしょう。そういえばこのスーツとの付き合いもかれこれ八年。十八歳の頃に従姉妹の結婚式に出席するために調達したものでした。就職後は仕事着としてもフル回転してくれました。柄や着心地は気に入っていたのですが、もう寿命と考えてもいいでしょう。どうせ今年は結婚式の当たり年。いい機会なんで新しく調達することにしましょう。

という事で近所のスーツ屋さんへ。「こういうスーツが欲しい」とか「こういう仕立てで」とか、そういう希望があるわけではなく、ただ単に広告で選んだ店です。某スーツ仕立て屋漫画を読み続けているはずなのですが、全く身になっていないようです。まあ、中途半端に拘ってやたらに金がかかるよりはいいでしょう。店でもほぼ店員の言いなり。持ってきてもらった物を試着し、とりあえず奥さんに見せてからご購入。「二着目お安いよキャンペーン中」だったので、一着目は冠婚葬祭用として、二着目は仕事着用として調達しました。これであと五年は戦えます。

と、冬用スーツを仕立てた一ヵ月後。そろそろ汗ばむ時期になりました。衣替えの時期です。私もクローゼットの中から夏用のスーツを取り出しました。こちらも就職直後に調達したわけですからかれこれ六年ほどの付き合いです。夏用スーツの準備をして、穴が開いてたりしないかチェックして、ついでに試着もして……試着……ぐおっ。

ホックが大変なことになっています。こう、空腹時はいいんです。ええ。問題は満腹時。ホックが閉まりません。ホックだけなら誤魔化しようもありますが、あろうことかチャックも大変です。半分しか上がりません。しかも、気を抜いたらチャック全開になります。一大事です。まだまだ着続けられるような感じなので腰周りの仕立て直しも考えましたが、どう見ても腰部分の布が足りません。このスーツも泣く泣くお蔵入りです。スーツが劣化する前に、身体の方が劣化してしまいました。


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