ネット上に数多ある雑文。その中では筆者の伴侶の話も度々出てきます。その際の呼び名は様々。「細君」だとか「妻の人」だとか「ミーたん」だとか。誰だ、ミーたんって。また、特定の呼称を用いずに「昔弁天、今布袋。それを聞かれてあら毘沙門」なんて具合にころころ変化する場合もあるでしょう。

「既婚である事を隠してネタにする」
これだけのために、このサイト内において私の相方の呼称は「相方」となっています。そりゃ、ね。隠しているんだからまさか「奥さん」と呼ぶわけにもいかず、かといって「彼女」では嘘になってしまうし。結果として抜け道のある「相方」という呼称を使う事になりました。実際に友人や仕事先の人たちと話す際に「相方」と呼ぶ事はありません。一番多いのは「奥さん」でしょうか。

第三者相手の場合はさて置いて、家族の中でどう呼び合っているかというと、いつの間にやら「パパ」「ママ」となっていました。私としては「パパ」なんていう座りが悪すぎてどっかに転がって行きそうな呼び名ではなく、「父ちゃん」とかそういう下町テイスト溢れる呼び名の方がよかったのですが。実際、長男が生まれてしばらくは頑固に使い続けていました。子供に呼びかけるときも「父ちゃんだよー」といった具合に。しかし、日中私が仕事している最中に着々と奥様によって洗脳教育が行われていました。いくら頑張っても私が呼びかけられるのは平日数時間と週末くらい。それに対して向こうは四六時中対抗してきます。勝てません。どうにもなりません。結局、気が付けば「パパですよー」と呼びかけている自分がいるのでした。

そうやって育てられたわけですから、子供達は当然、私たちのことを「パパ」「ママ」と呼びます。乳児であっても発音しやすい音ですので、「人生で先に発音されるのはどっちか競争」も行われるわけです。「『父ちゃん』対『ママ』だったら圧倒的不利」という事には気付いていたため、いい勝負になりました。しかし、長男はともかく、次男は二歳を過ぎても「ママ」と発音しません。決して言葉が遅いわけではありません。「ブッブー」(車両一般)、「かんかん」(踏み切り)、果ては「あんぱん」(アンパンマン)まで発音します。「パパ」だって発音します。しかし、「ママ」だけは発音しません。「パパ」で代用されています。「『父ちゃん』対『ママ』でもいい勝負になるんじゃないか」とすら思えます。

さて、そんな「パパ」「ママ」文化で育っている長男ですが、最近変化が出てきました。地震の影響で隣家との境であったブロック塀がなくなり、それに伴いお隣のお兄ちゃんたちと遊ぶことが多くなった我が家の子供達。居間や玄関先で遊んでいるときにお兄ちゃん達から「遊びにおいで」と誘われて行く、というのが多いようです。で、気になったのが、誘われた際の返答。
「お母さんに聞いてくる」
家族や親族内での会話であれば「ママに聞いてくる」となる文章です。四歳を過ぎ、「ママ」では恥ずかしいと思っているのでしょうか。そのうち「パパ」でなく「父ちゃん」とか呼んでくれるのでしょうか。「ママ」も、「お母さん」を経て「布袋さん」とかそういう呼び……いや、「弁天様」なんてよばれるようになるんだよきっとそうだよそうにちがいないよ。


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