『やらせ』だの『視聴率買収』だのと最近なにかときな臭いテレビ業界。もっとも、ただの小市民である私には何の関係もないはずでした。

ここは相方の実家。只今休暇をとっており、地元に寄生虫です。いや、帰省中です。私も相方も同郷であり、実家同士の距離もさほど離れていないため、どちらの実家にも顔を出す事ができます。二人の孫、そして二人の曾孫の顔を見せ、愛嬌を振りまかせた後の事でした。

テレビではたまたまやらせ番組のニュースがあっていました。やらせだろうがなんであろうが知ったこっちゃない、そう思いながらそのニュースを見ていました。と、お義母様がふと、相方に対して喋りかけました。
「そう言えば、あんたのお兄ちゃんも『やらせ』の番組に出てたってよ」
……なんですと?

相方の兄という事は、当然ながら私の義兄です。なんだかんだで結婚以来一度も会った事がなかったりするのですがそれはさておき。やらせの番組に出た?どういうことですかお義母様?

話を聞いてみると、少年犯罪がテーマの番組に出演したとか。テレビ局関係者に「テレビに出させてくれ」と頼み込んだ結果、そういう役で出演したらしいのですが、我々はその番組を見ていないんで詳細は知りません。お義母様曰く、顔一面にモザイクがかかり、手元だけが見える状態で万引きのあれこれについて語ったとか。なんとなく想像できます。きっと暗い部屋で「プライバシー保護のため、音声は変えてあります」なんてテロップと共にピンクの電話の背が高いほうが喋っているに違いありません。テーマが「少年犯罪」だから、きっとモザイクの向こう側ではニット帽を被った義兄が適当な事を喋っていたのでしょう。でも声はピンクの電話。

しかもその番組。司会者はみのもんただったとか。相方よりも母よりも義母よりも祖母よりも早く、みのもんたにお説教をされた義兄。とは言え実際はそのシーン、録画されていて別カットだったとかで、「みのもんたに直接お説教される」という凄いんだか凄くないんだか分からない経験をする事にはならなかったようです。でもきっと、そのVTRが終わった直後には出演者一同小難しい顔でうーんと唸りながら、「しつけが原因で云々」とか「ゆとり教育の弊害が云々」とか「地域社会の崩壊が云々」とか言って、んでもってそれをまとめるようにみのもんたが「さらに我々は実態を探るべく云々」とか言って次のVTRに移ったに違いありません。
って、なんか直接見たかのように力説してますが、私はその番組は見たこともないんで。あしからず。相方はその番組の別の回は見たことあるそうですが。

やらせはよくありません。しかし、この件の問題はそれ以外の個所にあります。
それは、「テーマが『少年犯罪』である」という点。
少年犯罪というとあれです。一時期は14歳が騒がれたりしましたが、だいたいそれぐらいの年齢です。中学生から高校生あたりの、髪の毛まっ金金でピアスごりごりな若いお兄ちゃんお姉ちゃん達がやらかす犯罪というイメージがあります。そんな番組に登場したのは我が義兄。私の2歳年上なんでもう26歳です。やっぱ干支が一回りした人を「少年」と呼ぶのは無理があるのではないでしょうか。私にとってはそっちの方が気になります。


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