以前仕事場で見かけた「未来の便座」は、結局一度もお世話になることが無いままいつの間にやら撤去されていました。違うフロアにあったので気付きませんでした。撤去されると分かっていれば一度くらいは使ってみたのですが。

さて、「21世紀」だの「未来の便座」だのと言ってますが、実家ではつい最近ようやく下水道が使えるようになりました。思い起こせば私が実家にいる頃から話だけは持ち上がっていたものの、諸々の事情により実際に使えるようにはならなかった下水道。それが、ようやく使えるようになったのです。ええ、最も願っていた私はとっくに実家を出ていますとも。

私だけでなく二人の妹も進学のために実家を出ているので、現在実家には両親と犬しかいません。で、昨年末頃から実家内の大改装を計画していたようです。みんな出て行ったから、工事がしやすくなった、というのが理由です。また、我が家の次男誕生に備えて長男を預ける予定だったため、水洗便所にして便器も洋式にするという計画もありました。実際は予定外の早産のために、私が長男を実家に預けた時はまだ工事も始まっていませんでした。そのうえ、長男を預けるのも短期間でしかないと伝えると、「じゃあ工事もゆっくりでいいか」などとぬかしまして。予想通り、盆に帰省する頃になっても工事は終わっていませんでした。

今回の改装工事のポイントは二つ。「台所の改装」と「トイレの水洗化」です。
システムキッチンそのものは父がモデルルームの展示品を強引に値切って購入した代物です。そいつを置くために台所自体を広げなければいけない、ということで工事をしたようです。

トイレの方は、実家内に二ヶ所トイレを設置しようということで、今までトイレがあった場所に加えて階段の踊場横に新たに便所が設置されました。私が帰省した段階では新設されたトイレしか使用できず、居間に未設置の便器が放置されている有様でした。自宅に帰る時点でも、配線工事が終わっていないため「使えるものの灯りが点かない」という事になってました。つまり、「夜中は全く使えない」という事です。懐中電灯片手に挑戦しましたが、得体の知れない恐怖が私を襲ってきました。えらい怖かったっす。

さて、この新しくなったシステムキッチンと便器。どちらも21世紀感溢れる代物でした。システムキッチンはキッチンでガスじゃなく電気でお湯を沸かすわ、食器洗い乾燥機は備え付けてあるわ、足元には温風の吹き出し口はあるわと、なんでまたここまでごっつい物を買いますかと尋ねてしまうようなものでした。便器は便器でウォシュレットだわ、ちゃんと乾燥もしてくれるわとこちらも豪勢です。あんた、基本的に二人で住む家なのにここまでしなくてもいいでしょうにと言いたくなるほどです。

そんな中、滞在中に「とりあえず使える」という段階になった便器も使ってみました。以前は汲み取り式の和式便所だったのに、それがウォシュレット付き洋式水洗便所になっただけでも感慨深いものがあります。「便器洗浄」だの「乾燥」だのというボタンは全て一箇所に集められています。「ああ、座りながらでも流せるんだねぇ」と思いながらも、立ち上がって後始末をし、しげしげとそのボタン群を見ていました。

そんな私の目に、不思議な文字列が飛び込んできました。
「開」「閉」
ここがエレベーターの中であればこのボタンの意味も分かりますが、工事中のトイレでは見当もつきません。とりあえず「閉」のボタンを押してみます。ぽちっとな。

ういーーーーーーーん。

……蓋が閉まりました。そうです。便器の蓋です。という事は。「開」のボタンを押してみると。

ういーーーーーーーん。

開きました。素晴らしい未来技術です。なんと、手で触れなくてもボタン一つで洋式便器の蓋が開くのです。

って、この機能、非常に無駄だと思うのですが。切羽詰ってる時にわざわざ「ういーーーーーん」なんてやらないし。結局手で開けると思います。うむむ。素晴らしい未来トイレが個人のお宅に設置されるのはいつになるのでしょうか。


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