小さな子供の頃は親と一緒に寝ていても、成長するに従って自分の部屋を持ち、一人で寝るようになります。都会の住居事情なんてものは全く考えていません。あくまで田舎の住環境を参考にします。

例えば私の場合。小学生の頃くらいに増築工事によって増えた部屋をもらい、いつのまにやら一人で寝るようになりました。妹達は二人で一部屋だったのですが、そのぶん私の部屋よりも大きいものでした。もっとも、大きいと言ってもせいぜい数畳程度の差しかなかったため、一人分の面積にしてみれば私のほうが大きかったのですが。

一人で寝ていると、夜中に自分が何をやったのかなんてことは当然わかりません。布団を蹴飛ばして風邪をひいても、ベッドから転がり落ちて床に落ちていたものを粉砕しても、全て自己責任です。幸いにも、私は寝ている時にベッドから転がり落ちる事はありませんでした。特殊な据付型のベッドで、柵なし、梯子なし、床上1.5mなんて構造でしたので、落ちたとしたら数日は寝込む事になっていたのではないかと思われます。丁度真下にはコタツやらゲーム機やらが置いてありましたし。

自分の寝相の悪さと言うものはある程度自覚はしていました。友人宅に泊まりに行った時なんか、何度かそういう指摘も受けました。しかし、寝ている時の自分の行動なんてものはどうやっても制御できません。ちょっと蹴りが入ったかもしれんが鼾はかいていないじゃないか、そういうことで勘弁してくれと司法取引を行った事もあります。ちなみに、くそ喧しい鼾をかいてくれた友人は有罪でした。

相方は、比較的おとなしい寝姿でした。が、あくまで「比較的」です。比較対象が私である時点で間違っている気もしますが、平和なものです。せいぜい、横で寝ている私の布団を強奪し、簀巻き状になって寝ているくらいです。ええ、寒かったですとも。

さて、相方と一緒に寝るようになって、新しく指摘された事があります。あれは結婚してすぐの頃。仕事に追われ、午前様も珍しくなかった頃です。いや、今でも午前様は珍しいわけではないのですが。それはさておき、妊娠中であるのでホルモンのバランスやら何やらとあって生活のリズムが逆転していた相方。仕方ないので昼寝をして夜更かしをする生活を送っていたようです。私は私で仕事があるので夜はちゃんと寝ていたのですが、ある日、相方からこういう事を言われました。

「昨日は寝言で『パラメータがああああ』ってうなされてたよ」

確かにその頃、仕事において「パラメータ取得の云々」なんて事で悩んでたりもしました。しかし、まさか夢の中でまで仕事をしているとは。これで唸った後にいきなり叫び出したりしていたら面白かったのでしょうけど、そういうオチは無く、一言だけで眠ってしまったそうです。

これで終わると「仕事に追われる大変そうなサラリーマン」という感じですが、こんな具合に仕事関係の寝言を言う事は珍しいようです。ある時は喋るだけでなく、行動も伴っていたそうです。相方の証言をもとに、その時の行動を再現してみましょう。

ぐっすりと寝ている私と、テレビを見ている相方。ふと、私が起き上がり、ポケットの中を探り始めます。ズボンに始まりシャツのポケットも、さらには枕元にまで何かを探しています。
「何を探してるの」と相方。
それに対する私の返答は。
「シュークリーム……」
何故か知りませんがシュークリームを探しているようです。
なおも、「シュークリームが半分ない」と呟く私。それに対して「もう食べちゃった」と言うと、納得したように再度眠りの中に落ちていったそうです。

翌日にそれを嬉しそうに話してくれる相方。「『冷蔵庫の中にある』って言ったらどうしたのかな」なんて事まで言ってやがります。しかし、完全に無意識の行動だったようで、私にはそんな事をやらかした憶えは全くありません。いやはや、これから先何を言い出すようになるのでしょうか。


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