実家が建設業を営んでいる、という事は何回かネタにしました。建設業と言っても幅広いわけでして、私も実家の主な業務範囲がどのようなものなのか、ということは正確にはわかっていません。「道路工事なんかはやらない」とか「家は建てる」とかそういう大雑把な分類でしか区別していません。

おそらく主な業務としては既存建築物に対する補修のようなものがあるのではないかと思います。不景気な世の中、新築工事がどんどん行われるというのもちょっと考えにくいでしょう。私が実家にいた頃も、住宅の新築なんてそうそうあるものではないようでした。市営住宅や一般住宅の修繕、補修なんて依頼はよくあったようですし、学校のような公共の建築物の補修も行っていましたので、こういう仕事がメインであると言ってもいいのではないかと思います。

もちろん、年がら年中修繕作業があるわけでもないでしょう。ということで、親父の会社では業務の一環として競売物件の落札と運営も行っていました。地方裁判所だったか家庭裁判所だったか忘れましたが、裁判所が定期的に発行している競売情報誌を参考にし、競売に参加していたそうです。初めて聞いた時は驚きました。とある古いアパートの前に連れて行かれて「ここを買ったぞ」なんて言われても普通は信用しません。(俺は親父の運転でここに連れて来られたと思うのだが、ひょっとして飲酒運転だったのだろうか)などと別の心配をしてました。

「アパート一軒まるごと購入」という事が目の前で、というか実家内でひっそりと行われていたというのは驚きました。何時頃から行われているのか知りませんが、その時点では所有する物件は一つだけでした。今現在どれだけ所有しているのかは知りませんが、それなりに競売には参加しているようで、実家に帰った際に、たまに「どこそこの物件を買えなかった」なんて話も聞きます。

昔は「そんなに儲かってるのか」とびっくりしたものですが、いろいろと知ってしまった、そして説明を聞いた現在では多少は納得しています。ご存知の方も多いと思いますが、会社なんてものは赤字か否かというだけで納税額が違います。この場合は赤字といいますか、「将来に向けての投資を云々」とかいう理屈ですね。「ボロいアパートを持っていれば、仕事がなくなった時もそこの修繕をする事ができる」という説明も受けました。職人さんを遊ばせておくわけにもいかないんで、こちらも納得がいきます。職人さんのお仕事を作り出して、その結果アパートの商品価値も多少は上昇する、という事です。まさかこれだけで理由で年代ものの建造物ばっかり落札しているわけでもないと思いますが。

そんな親父は数年前に父方従兄弟連中を襲った結婚ラッシュの際もいらん世話を焼いていました。実家に送られてくる競売情報誌を読んでは、ここの物件なんかどうだ、こっちもあるぞ、といった具合に話を持ちかけていたそうです。こういう物件というのは権利関係だのなんだのとややこしい制限が多く、素人が手を出すにはちょっと躊躇う面があります。その分、価格の面だけ考えるとお得なようです。お得とは言ってもそれなりの金額はするのですが。で、手続きなんかはこっちでやるからどうだ、みたいな話をしていたようです。結局それがどうなったか、という事は全然知らないんですが。

私が結婚した際も、ちょっと父に協力してもらおうかとも思いました。ただでさえ金が無いんで、安く上がるんならそれにこした事はないのではないかと。唯一の問題らしい問題と言えば、持ち家になると毎月の給料と共に振り込まれる住宅補助金が無くなる事。給料内で結構な割合を占める手当てがなくなるのは痛いかもなぁ、などと考えていました。

長男誕生直後の段階では、どのような手段であれ可能な限り早い時期に引っ越すつもりではありました。1Kロフト付き、日当たり最悪、近場に公園なしという住環境は、とてもではありませんが子育てに最適だとは思えません。そんなある日、私の母が思い出したように話を持ちかけてきました。

「親戚の家が空家になってるんだが見てみないか」


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