「ビックリマンシール」という物が世の中に出回りだしたのは私が小学生になるかならないかという時期でした。同世代の人間ならおそらく一度くらいは買った事があるであろうあのお菓子。しかし、メインとなるものはチョコ菓子ではなく、オマケであるはずのシールでした。

日本の駄菓子界はオマケと共に歩んできました。多分。何も調べないで書いてるんですが、そんなに間違ってはいないんじゃないかと。で、オマケの歴史ですが、私より上の世代では「ライダースナック大量遺棄事件」というものにリアルに遭遇した方もいらっしゃるのではないかと思います。あれも、主と従の立場が逆転した例です。「チョコ < シール」という力関係のビックリマンチョコと同様、「スナック < カード」という状態に陥っていたようです。

しかし、大量遺棄があれば当然大量回収もあります。私の幼少時はまさに回収役でした。遠征してまでシールを買い求めにいく友人達。それに付いて行ってチョコを貪る私。シール目当ての人間にとって、チョコは邪魔者でしかありません。どうせ捨てるんならくれ、そう言ってぱくぱくもぐもぐとチョコを食べておりました。しかし、あのチョコってそんなにまずくはないと思うんだけどなぁ。仮に今20円くらいでお菓子部分だけ売ってたらまとめ買いすると思うんだけどなぁ。

さて、私も成長して可処分所得が増えております。すると、目の前に広がるオマケもちょっと変化が出てきます。今現在、私の目の前に広がるオマケには「初回限定」という言葉がよくくっついてきています。「初回限定」。文字通り、最初のときだけ、という意味です。音楽CDの初回生産版にはボーナストラックがあるとか。PCのアプリなんかの初回生産版にはおまけで別のアプリが付いてるとか。夫婦が初回生産した長男には舅と姑がくっついてくるとか。いや、初回生産版、長女の場合もあるんですけどね。

この初回限定商売が最も行われているであるのが所謂エロゲー業界です。足を洗って結構経つので詳しい現状を知っているわけではありませんが、ポスターやマウスパッドなんかは可愛い方、「初回限定豪華なパッケージ」という名目で通常の倍程度のサイズのパッケージに収まっていたり、フィギュアが数体、場合によっては十数体ついてくる場合もあります。もうそろそろ、抱き枕をオマケに付けてくるメーカーがあると踏んでいるのですがどうでしょうか。先述したように現状を知るわけではないので既に実行されている可能性、いや、恐れもありますが。

さて、私は先日ネット経由で本を2冊購入しました。とある小説の復刻版であり、ファンの熱意が作者を動かした、そういう経緯のある本です。実は、この本の復刻前のもの、そしておまけで収録されている短編、私はそのどちらも持っています。既に読んだ事のある小説、誤植の修正を除いて特に加筆修正はない、事前にそれらの情報を手に入れていましたが、結局予約して購入しました。2冊で約3600円というお値段はちょっと痛いものがあります。復刻前の本が800円ほど、短編が収録されている本は古本屋で購入したため500円ほど、それだけの出費で手に入ったものを、何故2倍のお値段で再購入するのか。その理由が「初回特典」です。

作者からのアナウンスでは、初版に限り設定資料を記述した小冊子をオマケでつける、との事。冷静に考えると私は小冊子如きに3600円を出そうとしているのです。酔狂、というか、阿呆です。事実、当初は見送る予定でした。初回特典如きに惑わされるものか。近所の本屋に入荷した時に資金に余裕があれば買ってもいいかな。その程度の心構えでした。風向きが変わったのは発売1週間前。情報を集めていた私でしたが、何故か急速に「初回特典欲しい欲」が高まってきました。もうこうなると止まりません。どこそこのサイトは予約中だ、いや既に予約終了だ、あっちはまだ大丈夫だ、もう打ち切られた、こっちが再開してるぞ。そんなこんなで予約したのが発売日3日前。間に合いました。おそらく初版です。特典付です。わくわくです。

それから数日後。その本が私の手元に届きました。復刻前の本が「変則的なサイズの分厚い文庫本」という大きさでしたが、今回は新書サイズで上下巻。倍の大きさどころではありません。まあ、収納法は後で考えるとして、いざ、初回特典小冊子。
……あれ、小冊子って……この紙切れ?なんか2枚入ってますけど。「小冊子」じゃなかったの。いや、確かに設定資料書いてありますけど。あれですか。俺は紙切れ2枚のために3600円支出しましたか。高い紙切れだなおい。

あ、本も読みましたよ。面白かったですよ。いい本は何回読んでも面白い。ええ、面白いですとも。でもなぁ、腑に落ちないよなぁ。騙されたのかなぁ。


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