方向音痴というものは遺伝するそうです。私の友人にかなりな方向音痴がいます。どの程度の方向音痴かというと、中学生時代に家の周りの地図を描けなかったくらいの方向音痴です。家から駅までの地図を描かせようとしたら、初手から方角を間違えてました。10年も同じ所に住んでるくせに。彼に言わせると、祖母の方向音痴が隔世遺伝したのだ、俺は悪くない、祖母が悪いのだ、とのことです。

方向音痴だと、本人もですが周囲の人間も困ります。この方向音痴の友人は高校時代に単車に乗っていました。私はバイクには興味がなかったので原付を愛用していました。ある日、この友人を連れて遊びに行くことになりました。さすがに単車と原付ではスピードが違いすぎると思いだいたいの方向を教えたのですが、「絶対迷うから先導してくれ」。
……ええ、先導しましたとも。精一杯のスピードで走る原付。余裕たっぷりの、でも絶対に原付の前に出ない単車。事情を知らない人からすれば煽られてるんじゃないかと思うことでしょう。その時は雨が降っていたのであまり外にいる人が少なかったのが救いと言えば救いです。ちなみに、帰る時は原付がさらに一台増えていました。今度は単車を挟んで前後に原付。我ながら間抜けな光景だと思います。でも、こうしないと自宅近くで「あれ、あいつはどこに行ったんだ」といういらぬ心配をする必要があります。

ところで。本題と全く関係ないのですが、この日は一日中雨が降っていました。別の友人宅に遊びに行ってたのですが、どうにもやむ気配がない、仕方がない、ということで土砂降りの中を帰宅することにしました。途中で休憩しようと、とある自動販売機の前にバイクを止め、そこでしばらく雨宿りをしていました。ここの自動販売機、ジュースだけでなく、その、いわゆる「青少年の育成に悪影響を与える類の書物とか映像物」なんかも売ってまして。いや、びしょぬれで寒かったんで、「身体は雨にぬれて寒かったんだけど一部分のみは熱くたぎってました」とかいうわけではないのです。ふと、その自動販売機に近寄るcloud。「本でも買うのかと思った(後日、友人談)」なんて事を心配されていたのですが、私は見逃さなかったのです。お札の投入口に刺さったままの千円札を。
「何か暖かいものでも飲もうか。俺の奢りで」
いや、奢りと言っても缶ジュース程度なんですが、非常に感謝されました。なんであんなとこに札が刺さってたんでしょうか、なんて考えるのは野暮でしょう。近くの少年か、はたまたおっさんか知りませんが、あなたの性欲はちゃんと私達の体温となりました。この場を借りてお礼申し上げます。

……おかしいなぁ。方向音痴の話だったのに、なんでこんな話になってるんだろう。


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