実家が引っ越す、と言うか引っ越したのですが、今までたまりにたまった荷物を持っていくなり処分するなりしないといけません。荷物なんてものは一年でも相当な量になるのに、それが三十年分です。さらに実家がやってる建設業の書類あれこれ二十年分も合わせるとなんと五十年分です。半世紀です。いや勿論足すようなもんじゃありませんが。

足すようなもんじゃありませんし、そもそも同列に扱っていいもんじゃありません。紙切れ一枚にしても、文庫本の一ページくらいなら破れても仕方ないで済みますが、それが領収書の一枚だと草の根分けても探さなければなりません。ましてや公文書の類だとしたら。ただ、あまりにも量が多すぎるので、「机の上と中のモノ、全部まとめてゴミ袋に入れてそのまま輸送」という丁寧なのか雑なのか分からない扱いをされています。新居についたら荷解きしてゴミ袋からぶちまけます。少なくとも、「引越しついでに片付け」とはいかないようです。

「せめて自分の荷物くらい仕分けしろ」と言われたので、かつての自室に置いてあった物を見てみました。と言っても、そもそも不要な物は家を出るときに処分していたので、そこにあるのは「捨てるには惜しいんだけど、かと言って持っていくわけにもいかない」という物ばかりです。田舎の方が収納個所がたくさんあるんだから段ボール一つ二つくらい置いていってもいいじゃん、という理論に基づきまとめられた物です。例えば中古ゲーム専門誌「ユーズドゲームズ」創刊号とか。別冊宝島の競馬読本シリーズとか、そういう「捨ててなかったっけ?」という物ばかりが出てきました。あと、「プラネテス」全四巻とか。私の引っ越しの際に紛失したと思ってたのに何故実家にあるのだ。なんでも私が実家の本棚に置いて行ったそうです。知らん。覚えとらん。じゃあ鈴木みその「銭」もあるのかと思いきやありません。こっちは本当に引っ越しの際に紛失したようです。三巻だけないんだよなあ。どこ行ったんだか。

仕分け結果は「全部とりあえず新居に持ち込んで押し入れに突っ込む」となりました。田舎だからできる先送りです。とりあえずはこのまま。あとは母や妹に任せることとしました。どうせ大したものは残ってないし。

そんなある日、母から電話がかかってきました。いよいよ旧実家をどうにかするにあたり、最終的な大掃除を実施した、と。その際に出てきた私の荷物の処遇をどうするか、だそうで。大したものは残ってないんだから全部処分して構わないはずなんですが、一応内容を聞いてみました。まずは、小学校と中学校の卒業アルバムや文集だそうです。あれ、そんなん残ってたっけ。「処分してもいいけど、あんたが何かやらかしたときに、マスコミに提供しないといけないからねえ」提供するなよ。小中学校の同級生である奥さんが全く同じものを持ってはいるけど、かと言って捨てるのも気がひけます。とりあえず新居に持って行ってもらうことにしました。先送り先送り。片付けの件は可及的速やかに前向きに善処しますはい。

次に出てきたのが「なんか英語が書いてあるカードゲームっぽいの」だそうで。英語でカードゲームって、それは「Magic: the Gathering」ではなかろうか。いやそれはむしろ家を出る際にどう処分したのか収納したのか分からずにずっと探していたのですが。「燃えるゴミでいいの?」って、いや待って。確保して。新居に持ってって。今度帰省した時に回収するから。もし当時のまま残っているとしたら、市場価格が一万円を超えている「Force of Will」が二枚は含まれているはずです。その辺を伝えていると、近くにいた息子たちの目が俄かに輝きだしました。そりゃ、「一万円以上する、もう売ってないカード」というのはなかなか凄そうな響きです。数千円レベルであれば、多分子供たちが持っている様々なカードゲームの資産の中にもあるでしょう。デュエルマスターズとか、古いものであればムシキングとか。でも、さらに一桁上というのは、これがなかなか出てきません。よっぽど強いとか、よっぽど古いとか、そういうものに限られてきます。発売直後などの、流通量そのものが少ない時期であれば一時的に数万円という値段が付く事もありますが、それとて勢いが収まれば数千円程度に落ち着くものです。その辺も踏まえて、子供たちは「一万円のカードって、どんなに強いんだろう」と思っているのかもしれません。「相手の呪文を打ち消す」という、それだけ聞くと凄く地味なカードなんですが。

さて、ここで大きな問題があります。そもそも、「発掘されたものが『Magic: the Gathering』のゲーム用カードである」という前提で話を進めましたが、そうではない可能性もあります。また、「発掘されたものは『Magic: the Gathering』のゲーム用カードであるが違う物も含まれている」という可能性もあります。もし、発掘されたものが私の記憶通りならば、そこには加えて「To Heart トレーディングカード」も含まれているのではないかと思います。身も蓋もない言い方をすれば「エロゲーのトレカ」ですが、たしかこの頃はプレステ移植版の発売後だったと思うので、「お姉ちゃんがいっぱい出てくるゲームのトレカ」と言い張ることもできます。原作はともかく。んで、それが発掘されたカードの中に含まれるのか否か、そもそもそれがメインだったりしないだろうか、という不安があるのです。いろいろまずいでしょ。父の威厳とかそういうアレが。「英語のカードゲーム」らしいから大丈夫とは思いますが、回収の際にはまず私が安全を確認したうえで子供たちに引き渡さなければと思います。


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