結婚式の主役は、これはもう疑う余地もなく花嫁さんです。花婿さんなんて添え物にしかなりません。。注がれた酒を飲み、必要な場面でスピーチをするくらい。あとは黙って座ってろ。

新郎サイドに座ることが多いのでよく分かりませんが、スピーチや余興も新婦サイドの出席者の方が気合が入ったりするのでしょうか。先日出席した結婚式では、新婦側の勢いに押されて「俺は盛り上げ役だと思ってたけど、今日はもうお役御免だと思った」と、こちらの友人がこぼすほどでした。まあこの辺は年齢的なものもあるのかもしれません。何と言っても新郎新婦の八歳という年齢差。向こうは二十台半ばという事で、そりゃ元気も有り余ってるでしょう。勿論、新婦より年下の出席者もいるわけでして、一部には我々の十歳下なんて方もいました。おいおい十歳下だってよ、平成生まれじゃねーか、なんて言ってると「お前、いくらなんでも大袈裟だ。平成って……平成だ」と愕然とする者もいたり。喋り始めは私が適当な事を言っているとでも思ったのでしょうが、暗算して現実を知ったようです。我々昭和五十四年度生まれ。丁度十年後には平成を迎えております。計算しやすいのは便利と言えば便利です。

盛り上がる新郎新婦友人席の後ろには、当然ながら新郎新婦の親族席があります。通常、親族の席は後方にあり、前方の盛り上がりとはちょっと距離が感じられます。両家の間であいさつ程度があったり、もしくは長い付き合いの友人なんかは新郎新婦の親御さんなり兄弟なりと挨拶したり。ですが、「新郎新婦の従兄弟」なんてレベルだと殆ど外部との交流はありません。親族間の挨拶は、そりゃありますがそれくらいです。ましてやその従兄弟の配偶者なんて、酔っ払った友人たちに絡まれることなく、親族として招かれた自分たちの子供の世話をしていればいい。普通はそう考えます。披露宴開始直後にご機嫌な新郎友人が寄って来て自分の旦那に絡みだし、おいおいもう出来上がってんのかよなんとかしろよその他友人一同とか思ってたら旦那は旦那で笑顔で付き合いだし、さらに新郎弟まで巻き込まれだしたらそりゃ混乱します。ひょっとして挨拶していなかった親族の誰かなのか、とか考えられたのではないでしょうか。

新郎こと友人には、年の近い従兄弟がいました。友人一家は祖父母と同居していたため、従兄弟一家が帰省して友人宅に泊まることがありました。で、友人と年が近いという事は、友人と同級生である私とも年が近いという事になります。波長が合ったようで意気投合した我々は、その従兄弟が帰省するときはよく一緒に遊んでいました。この従兄弟、帰省の際にゲームを持参する事も多く、その結果私が「ロマンシングサガ2」と「フロントミッション」というスーパーファミコン全盛期のスクウェアの名作二本を衝動買いする原因ともなっています。だって、横から見ててもすげー面白そうなんだもん。現代においても語り継がれる名作レベルのゲームですので、衝動買いした私をいったい誰が責める事が出来るでしょうか。俺は悪くない。従兄弟も悪くない。誰も悪くない。ゲームは面白い。

かつて、盆正月などの長期休暇の際には友人に対して「今年は従兄弟は来るのか」とよく尋ねていました。普通は「明日は親戚が来るから遊べない」となるのですが、この従兄弟に限っては「明日来るから一緒に遊ぼう」となります。そうやって一緒に遊んだ従兄弟と、久しぶりの再会なのです。面喰っている奥さんには従兄弟本人から説明してもらいましたが、「新郎の友人で、よく一緒に遊んだ」という簡潔な説明だけで理解してもらえたのでしょうか。「一緒に遊んだ」ってだけで、そこまで盛り上がるものなのか、そもそも「一緒に遊んだ新郎の友人」がテーブル一つ単位でいるものなのか。「実際にいるんだから仕方ない」としか言いようがありませんが、式後にでも改めて説明してくれていたら幸いです。多分奥さんに会う事はもうないでしょうが。

前回あったのは十年以上前。新郎の祖父母は既に亡くなっているため従兄弟が帰省してくることもない。そもそも独立して関東在住。それらの諸条件が重なっているため、今後私は奥さんに限らず彼とも会う事はないでしょう。せいぜい、友人から近況を伝え聞くくらい。だからこそ、友人から式に呼ばれた際には、あのころと同じように「従兄弟は来るのか」と聞いたのです。友人と従兄弟が顔を合わせる機会は、親族である限りは何かしらあるのでしょうが、そこには私はいません。すぐに思いつく限りだと新郎弟の結婚式なんかでしょうか。そこには新郎の兄として友人が、そして親族として従兄弟はいるでしょう。

何はともあれ、久しく会えなかった友人に、そしてこれから久しく会えない友人と会えて私は満足です。彼と次に会うのは新郎の葬式くらいしか思い浮かびませんが、これはこれで当分予定はありません。まさか「久しく会ってないからとっとと死ね」とか言えませんし、「むしろ定期的に死ね」とか無理です。いやそりゃ八歳下というのはそれくらいの罪ではありますし、いっそ週一でくたばっていただいても一向にかまいませんが。


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