福岡県北九州市に「西日本総合展示場」という建物があります。今まで二度ほどしか行った事が無いのですが、大きめの展示会などが開催されているようです。先日はここでWCSの地方予選というイベントが開催されました。

英語表記だとよくわかりませんが、簡単に言うとポケモンの大会です。TVゲームとカードゲームの九州地区代表を決めるイベントです。今回行われたのは、事前に行われた県予選で勝ち進んだ人たちの決勝戦、さらには救済措置として行われた敗者復活トーナメントです。この敗者復活トーナメントに長男がエントリーしたので、その付き添いと応援に行ってきました。

「敗者復活」とは言いますが、予選に参加していなくても応募は可能でした。そもそも、福岡県予選はやたらと締め切りが早かったため、私が応募しようとしたのは締め切り三十分後だったのです。結局県予選は応募できないままだったのですが、今回の敗者復活トーナメント「ラストチャレンジ大会」に当選できたため、「挑戦できずに断念」という最悪の展開は避ける事ができました。

今回エントリーしたのはTVゲームの方。携帯ゲーム機のゲームを「てれびげーむ」と表現する事には若干の違和感がありますが、まあ「カードゲームではない」という事で。んで、ゲーム大会に出場する事になったため、強いポケモンを育てないといけません。今回のルールで大切なのは「手持ち4匹でダブルバトル」「ポケモンのレベルは50まで」といった点でしょうか。ポケモンの対戦で一般的な「1 VS 1」のシングルバトルではなくて「2 VS 2」のダブルバトルであるという点。そして、子供がとても気に入ってどんどんレベルを上げたポケモンは使用できないという「LV50制限がある」という点。この条件のおかげで、改めて大会用のポケモンを育成する事にしたようです。

たまたまレベル50に近い、強めのポケモンがいたために実際に育成するのは二匹ほどになりました。今回は、兄弟で一匹ずつ育成する事にしたようです。なるほど、時間が限られている以上、レベル上げという単純作業は手分けして行ったほうが効率的です。ならば、一人よりも二人、そして二人よりも三人の方が効率的なはず。そう思って私も助力を申し出たのですが。

単純にレベルアップするだけならば、効率のいい稼ぎ方を知っている私の方が向いています。なので「パパがレベル上げを手伝ってあげよう」と言いましたが「いや、いい」と断られました。
対戦では習得している技も重要です。そういう技を習得できるアイテムを持っているので「パパが譲ってあげよう」と言いましたが「いや、いい」と断られました。
対戦時には、それぞれのポケモンに道具を一つ持たせる事ができます。私は有用な道具を複数持っているので「どれかあげようか」と言いましたが「いや、いい」と断られました。

さらには。今回行われる「ダブルバトル」というルール。シングルバトル以上に「相手の行動を封じる」「相手の『行動を封じる』動きをかわす」といった読み合いが重要になります。そのため、単純な攻撃力だけではなく、素早さが早かったり器用なポケモンのほうが有利と言われます。ですが、今回長男が育成する、主力と決めたポケモンは「ケッキング」というポケモンでした。このケッキング。単純な破壊力だけならば右に出る者はそういません。しかしながら強すぎる力には制限が付き物。ケッキングには「二ターンに一度しか行動できない」という決して小さくない欠点があります。ただでさえ手数が重要視されるダブルバトルでこれは致命的です。「ケッキングはやめときなさい」「せめてその技の代わりにこの技を覚えさせなさい」とアドバイスをしましたが、それでも「いや、いい」と断られました。

ここまで頑固だとどうしようもありません。今回の大会はトーナメント形式。片道一時間ほどかけて行って、十分足らずでの帰宅も覚悟して本番に挑む事となりました。

そして当日。なんか説明を聞いていると「まずは予選トーナメント三戦」「その後決勝トーナメント五戦」だと言われました。え、そんなにいっぱいあるの?調査不足が丸出しですが、まあどうせそこまで長居する事もないだろうと思いました。なんだかんだでトーナメントが始まります。初戦の相手は二歳くらい年上と見られる女の子。小学生の一、二年というのは非常に大きいという事を理解しているので「駄目だ、これは負けた」と思いました。暫くすると決着がついたのか、その女の子が手を挙げて係員を呼んでいます。係員が勝敗をチェックし、そして試合が済んだ参加者両名は次の場所へ……あれ?その女の子が進んでいる先は敗者の退場口では?そして息子が進んでいる先は第二試合の区域では?なんかよく分かりませんが初戦突破です。後から聞いた分では「相手の先鋒にギャラドスがいたから、ユキメノコの10万ボルトで一撃だった」等、どうやら相性がよかったそうです。

数十人が一斉に対戦を開始したのですが、その中で最も早く決着がついたのが息子達。次戦の相手が決まるまでしばし待たなければなりません。やって来た二戦目の相手は、同じ年くらいの男の子。先ほど年上を破った勢いで行ってほしいものです、と思ったのですが。対戦する区域と観戦する区域はロープで分かれています。そのため、私はちょっと離れたところから観戦していました。第一ターンの一部だけ確認できたのですが、それは息子のユキメノコとグレイシアが相手の攻撃技である岩雪崩を喰らっている場面でした。ユキメノコもグレイシアも氷タイプのポケモンで、岩雪崩は岩タイプの技で、氷タイプに対して岩タイプの攻撃は「こうかはばつぐんだ」となりまして、さらに言いますとユキメノコは準主力でありつつ決して耐久力が高いわけではないものでして。「駄目だ、これは負けた」と思いました。が、それからしばらくすると息子のガッツポーズと、そして「よっしゃ」という小さな雄叫びが聞こえました。先ほどと同様係員にチェックをしてもらい、そして両者が進んだ先は。相手の男の子が退場口、そして息子が第三試合の区域でした。なんか、また勝っちゃったみたいです。

第三試合の区域には、既に対戦相手が準備していました。今度は年上の男の子です。初戦の相手は年上ではありましたが、女の子でした。二戦目の相手は男の子でしたが、同じくらいの年でした。しかし、三戦目、予選トーナメント最終戦の相手は年上の男の子です。別に男女の能力差がどうとか言うつもりはありませんが、普通に考えるとゲームが強いのは年上であり、また男の子です。なんぼなんでもこの相手は無理だろう。対戦相手を見た段階で「駄目だ、これは負けた」と思いました。ただ、この「駄目だ」も先ほどまでとは若干異なります。曲がりなりにも二勝している息子。ひょっとして、ひょっとするのではと思っても仕方ないではありませんか。そんな、自分が出場しているわけでもないのにハラハラしていた父の元に戻ってきた息子の手には、「三勝した」と記載されたトーナメント結果が。そしてちょっと誇らしげな笑顔が。

結局、この快進撃は決勝トーナメント一戦目でストップしてしまいましたが、その試合も決して惨敗だったわけではなく、ちょっと手を変えれば結果が異なっていた可能性すらあるものでした。正直言って、ここまでの結果を残せるとは思いませんでした。子供のゲーム大会というと、親や兄弟が陰に日向に手を貸して子供は操作するのみ、なんて事も珍しくないようです。今回の大会でも、相手の手持ちポケモンや技から「これは誰かが入れ知恵をしたな」と判断できるようなものもありました。そんな中で自分だけの力で、自分の考えを突き通し、それでちゃんと結果を残したというのは素晴らしい事だと思います。それと同時に、私の行動はほんの少しの親切心であったとはいえ、子供の考えを否定するものであったという事を反省しなければいけません。気付かないうちに「駄目な親」な行動をしていたんですね。「子供の」ゲーム大会なんだから、ちゃんと子供たちの実力で勝負するべき。改めて気付かされた一日でした。


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