ちょっと火傷しました。と言っても、鍋をひっくり返したとか湯飲みをこぼしたとかそういう話ではありません。

我が家が為替取引に手を出したのは、かれこれ四年も前になります。あれからの円相場は、先行きが期待できるほどの円高になるわけでもなく、個人的に設定した「ここまで行ったら買おうライン」に到達することはありませんでした。あ、一度だけあったな。私が個人的に設定した「買おうライン」は「一ドルが九十九円以下になったら」です。今年の夏頃でしたか、一度そのラインを割り込んで「よし買おうこれは買おうここで買わずにどうする」と奥さんに提案したのですが、「今は余剰資金が無いのであまり儲けが期待できない」という事で見送りとなりました。「一割増えたところで、十万円が十一万円になってどうするのか」と淡々と言われては返す言葉もありません。ううっ、父ちゃんの稼ぎが悪くて迷惑をかけるのう。ごほごほ。

そもそも我が家の為替取引担当者である奥さんは、近年はそれほど頻繁な取引はしていないようです。奥さん専用のノートPC にのみ口座のログイン情報を保存しているのですが、そのノートPC は下手すれば半年くらい起動しない事もありました。最近はPTA関連の資料まとめだの作成だのでそれなりに使っているようですが、そういう雑用が終わってからさらに為替取引とまではいかないようです。結果として、どこぞの通貨を買ってもそれから長期間ほったらかしとなっていました。もともと数分単位で十銭二十銭の変動を読み取るような取引ではなく、数ヶ月や数年単位で十円二十円の変動を待つような運用を想定していた私にとってはこの点は問題ありません。「何の通貨をいくらで買ったか」くらいを覚えておけば、まあ大勝はしないだろうけど大負けもしないだろうと思うからです。

しかし、奥さんに完全に任せっぱなしだったわけでもありません。昨年の夏頃からFX、所謂「外国為替証拠金取引」というものに興味を持ちました。これが奥さんの為替取引、取引と言うか「外貨預金」ですが、これとどう違うのか。真面目にFX について勉強したわけではないので多分不正確なのですが、私が理解している範囲内で説明するとこうなります。

奥さんは銀行口座に入金した資金の範囲内でどこぞの通貨を購入するのですが、FX の場合ですと実際の資金の数倍、場合によっては数十倍の通貨を取引する事も出来ます。株取引における現物取引と信用取引の違いみたいなもんですかね。で、こうする事によって莫大な利益を得る事も出来ます。外貨預金ですと「十万円が十一万円になってどうするのか」なんて言われましたが、それこそ十万円が百万円になったりそれ以上になる可能性もあるのです。勿論デメリットもあります。外貨預金にて「十万円が九万円になった」という事態が発生するような場合。例えば「一ドルが百円の時に買ったら、いつの間にか一ドルが九十円になった」なんて場合。外貨預金ですとレートそのままの損となりますが、FX の場合ですと十万円が一万円になったり、それ以下になったりもするわけです。

FX に対してネガティブな説明になってしまいましたが、そもそも私がFX というものに興味を持ったのが昨年夏に起きたサブプライムローン絡みのあれこれです。なんかいろいろ大変そうな事が起きてるっぽいんで調べてみると、そこにはFX の犠牲者が死屍累々と。最初のイメージが「FX では首が吊れる」的なものだったせいでしょう、それからも敗者のあれこれを追うばかりとなりました。それで得た結論は、「FX とは初手に幾許かの資金を失い、その後時間と体力とその他諸々を削ってプラマイゼロに持っていく遊び」というものです。あと、「最良の選択は、一銭も賭けない事」も。FX で大儲け?いやいや無理無理。

そんなこんなで一攫千金を夢見るのは宝くじに任せ、為替方面では手堅く行こうと決めていました。そこに訪れたのが今年十月の世界レベルでの金融危機。為替相場やら株式相場やら原油価格やら、もういろんな相場が下がったり上がったり下がったり下がったりしたアレです。もともと設定していた円相場買おうラインである「一ドル百円」どころか「一ドル九十円」すらも見えてくる段階に至って、奥さんも重い腰を上げてくれました。「十万円が十一万円」は駄目でも「十万円が十二万円」ならば動いてくれるようです。行動が遅れたのでやや値を戻し始めていましたが、なに、頭と尻尾はくれてやれ。奥さんのノートPC で取引口座にログイン。実に三ヶ月ぶりのログインだったようです。各種通貨がえらい事になっているんで「ちょっと損してます」的警告表示が出てましたが、まあ現状では仕方ありません。こんだけ派手に下がるんだったら、どこの通貨を持ってても損するだろうしなあ。で、お目当てのドルを幾許か購入して目的完了。短期的にはともかく、年単位で待っていればそれなりの利益にはなることでしょう。十円、欲を言えば二十円くらい円安に振れれば、家族でちょっと豪華な夕食を食べる事もできそうです。

と、ここで終わればいいのですが勿論きちんとオチも付きます。ログイン時に気になった警告。損している事そのものには問題はありません。世界中の経済がこれだけ派手に崩壊しているのですから無傷で済むはずもありません。しかし、損害額はそれなりに気になります。今日明日にでも現金が必要というわけでも無いので赤字ならば塩漬けしていればいいのですが、具体的になんぼの赤なのかというのが気になるのです。で、その結果を見てみると。

なんとまあ、イギリス通貨であるポンドとの取引が真っ赤っかです。奥さんに尋ねると、八月時点では二百円ほどだったポンド相場がいつの間にやら百五十円程になっているのが原因だそうです。なるほど、五十円も円高になっていれば仕方が無いかなって、いやちょっと待て。ついさっきドル相場で「十円二十円くらい円安になれば」とか言ってたのに、既に五十円の円高を喰らっていたですと?「外貨預金は家計の余剰資金、さらにメイン投資先はドルで、それ以外の通貨は余剰資金内のさらに余剰資金を使う」という方針だったので大火傷はしていませんが、それでも赤い数字を合計してみるとちょっとした額になっています。購入時点では二百円ほどで細かく動いていたそうなのでせめて一ヶ月ほどで売り払っておけばこんな真っ赤な惨状はなかったのでしょう。しかし後悔しても仕方ありません。目指せ、黒字転換。利益獲得ではなくプラマイゼロへ。そのためにはドルだけではなくポンドがぐぐんと上がる必要があるのですが、いったい何年かかるのでしょうか。ポンドの値動きなんて知らんがな。


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