平成二十年の十月上旬といいますと、我々昭和五十四年生まれの面々にとっては「三十路リーチである二十九歳になった人間が半数突破」という時期に当たります。友人たちにも、「ほぼ三十路」な人間がいるわけです。私はといいますと誕生日は十月の中旬なわけでして、そんな方々を「やーい、ほぼ三十路」とか言える訳です。「僕はまだ二十八歳だから、四捨五入して二十歳だもん」とか言える訳です。

そんな三十路間近のおっさん達が酒を飲んで喋るわけと、話が下方面に行かない訳がありません。いや、別に下ネタを好き好んでやっているわけじゃないのですよ。社会情勢とか政治経済とか近況報告とか、そういう山や谷を乗り越えて最終的に下ネタに行き着くのです。ふつうはそれを「好き好んで下ネタ」と言うのでしょうが、まあ細かい事は気にしない。

そもそも、社会的にアリな下ネタもあるはずなのです。例えば先日の仕事仲間の飲み会。その場で繰り広げられたのは「思春期における4LDK住居の必要性」でした。なんかこう書くと真面目な話をしているように見えますが、前フリが前フリだったんでそうも見えないかもしれません。そして実際に真面目な話ではなかったりするのです。

現在、我が家族は3LDKのマンションに居住しています。LDKを除いた三部屋のうち、一部屋は夫婦の寝室、一部屋は洗濯物干し場兼物置兼私のPC置き場、そして残る一室が子供部屋です。子供部屋といっても二段ベッドに小さなテーブル、それと服や教科書や小物類を置く棚などでいっぱいいっぱいです。とても学習机なんて置くスペースはありません。

今はまだ兄弟仲良くやっているんでこのままで問題ないでしょう。ですが、あと四年ほどで長男は中学生です。中学生というとこう、あれです。たまには自室で一人っきりになりたい時間帯もあったりなんかしちゃったりするんではないかと思うのです。その、所謂「ゴミ箱が異臭を放つようになる」時期、もっと言えば「ティッシュの消費量が増大する」時期ではないですか。回りくどい言い方をしましたが、平たく言えば自慰行為です。手淫です。

学生時代には寮生活を送っていた友人もいたため、共同生活における自慰空間の確保の難しさは知っています。彼らはトイレで事をなしていたようですが、いやしかしうちでそれをやられるとトイレが詰まったり匂いが篭ったりで大変です。それに、兄弟が同じ部屋で机も無いとなると書物の隠し場所も無い事になります。机の引き出しの奥に隠すせよ、ベッドの下に隠すにせよ、いずれにしても個室は必要ではないか、というのが私の考えです。

飲み会の席でそんな持論を仕事仲間に語ってみました。「中学生くらいになるとゴミ箱が臭くなるから自室が必要」と。さすが皆さん、私が何を言いたいのか一発で理解してもらえました。ピンと来ない人もいましたが「ティッシュがどんどん減る」と続けたら分かってもらえました。理解すると同時に大爆笑と大納得です。皆さん肯定的です。中には「俺は気にしないけど、奥さんがそんな事を言ってた」なんて人も出てくる始末です。まあいくら持論を展開しても、いきつく結論は「お金ないから貯金しないとねー」という現実的なものなんですが。宝くじでも当たんねーかなあ。

「子供の下の環境にまで手出しするのは過保護だ」という意見もあるかもしれません。では、ここからは自分達の下の話を。

最初の話に戻りますが、もうそろそろ三十路リーチな年代です。友人達の多くは同年代の人間と結婚していまして、そう考えると次世代誕生に関するタイムリミットが近づいてきているとも言えます。誰かの発言のように「羊水が腐る」わけではありませんが、出産時のリスクとかそういうあれこれを考えるとあまり時間の余裕はありません。私たちのように「先走ったわけじゃないよ、ただちょっと順番が入れ違っただけなんだ」という場合ならばともかく、普通は結婚したら有形無形の「で、お子さんは?」なプレッシャーがやってきます。

子供というものは授かり物です。どんなに頑張っても授からない事もあれば、その逆もあります。例えば、学生時代であれば「『一週間遅れている』と言われて胃の痛い思いをしたけど三週間遅れで来る物が来て安堵のため息」であったり、「土曜日の夜は若気の至りで種をまき、日曜日の朝は不作である事を願う」な感じだと思います。ですが、これが結婚してからとなると「今月も駄目だった」とか「来月こそは頑張ろう」とか、来てほしかったものを望まなくなってしまいます。さらには「どうすれば授かるのか教えてくれ」とか言われる始末です。真顔で「どうすれば授からないで済むんだ」とか言い返したらチョップが返ってきてしまいました。怒るなよ、まだ「この壷にお祈りすれば問題なし。今ならわずか五十万円」というネタも準備してるんだから。

自分のときはどうだったという経験談。全く当てにならなかった男女の産み分けの方法各種。全部下ネタではあるもののそれなりに真面目な話でもあるのです。いや、真面目ですよ真面目。全国的に問題になっている少子化への対策の話題なんですよ。例えそれが頻度に関しての話で「月一って少なくない?」な話題であったとしても。何の頻度って、その、あれですよ。プロレスごっこ。もしくは寝技の特訓。


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