世の中には様々な効果音が溢れています。人を叩くと『びしっ』とか、姿勢を正すときに『びしっ』とか。あと、子供がポーズをとる時に『しゃきーん』とか、技を繰り出してくるときに『しゃきーん』とか。これら効果音は、ある程度記号として成立しています。大工の音は『とんてんかんてん』ですし、救急車は『ぴーぽーぴーぽー』、タラちゃんは『すこてこすぴょろーん』です。キーンと飛んでくるのは飛行機かアラレちゃんですし、ミサイルや爆弾は『どかーん』と爆発します。

これらは人によって若干表記が違ったりします。『どかーん』じゃなくて現れた『ぼかーん』だったり、はたまた『ずどーん』『どぎゃーん』等等。数え上げたらきりがありません。時報の音もそうです。『ぴっ、ぴっ、ぴーん』なのか『ぴっ、ぴっ、ぽーん』なのか。はたまた最初の音が『ぴっ』ではなく『ぽっ』なのか。やっぱり何種類も組み合わせがあります。

電子音に限る場合、『ぽっ』という音よりも『ぴっ』という音が多くなります。目覚まし時計も『ぴぴぴぴっ』と鳴りますし、ボタン押下時の確認音なんかも『ぴっ』という音が多いです。中年以降の方が電車の中で携帯を弄ってると、確認音をオフにしたりマナーモードにしたりしていないので、ボタンを押すたびにぴっぴぴっぴ鳴ります。あれは勘弁して欲しいものです。

学生時代はよく、時報代わりの腕時計のアラームが聞こえてきました。通常の授業中であれば講義の声なんかにかき消されて聞こえないであろう音量なのですが、これが試験中だったりするとはっきりと聞こえてきます。教室前方にある時計に合わせて『ぴぴぴぴっ』と一時間に一回音が聞こえ『ぴぴぴぴっ』、えーと、こういう具合に微妙にずれて複数の腕時計が音を鳴らします。酷い時はさらに一分くらいずれて次が鳴り出したり。調整しろよ、誰か。腕時計嫌い派の私としては、「試験中くらいアラーム音消しとけ」と思いもしましたが、授業中に突然携帯から自作ヒゲダンスのテーマを鳴らして以来、大きい事が言えなくなりました。たまたま別教室で授業を受けており、主が不在のバッグの中から高らかに鳴り響いてくれたようで。家の携帯を借りていたのでマナーモードの設定方法が分からなかったのですごめんなさい。

あれから数年のときが経ちましたが、現在の授業風景の中には携帯のアラーム音が根付いているのでしょうか。しかし、携帯のアラーム機能は主に目覚まし代わりだと思われるので、時報よりはメール着信音の方が多いのかもしれません。腕時計のアラーム音はほぼ一種類固定でしたが、着信音となると複数種類選べます。さらに最近では着ボイスなんてものも存在します。メール着信なんて不定期なタイミングで『ぺれれれっぺっぺっぺー』とレベルが上がったり、『ちゃんちゃかちゃかちゃか、ちゃっちゃ、てけ』と笑点が始まったり、『ここにいるぞお!』と馬岱が自己主張したり。何でもありです。

携帯電話の効果音というと、カメラ機能使用時の効果音もあります。盗撮防止という理由で導入された「今、撮影しましたよー」音。導入の経緯が経緯であるがためにある程度大き目の音で、しかも音の種類にあまり選択の余地がありません。自由にカスタマイズできたら「無音の音」が選ばれて本末転倒な事態になるからでしょう。そのため、どの携帯も似たり寄ったりな音。基本的には昔ながらのカメラの撮影音と同じような物ですが、「携帯のカメラですよー」と言わんばかりの電子音全開な効果音もよく聞こえます。

先日、とある結婚式に出席しました。結婚式の招待状に燦然と輝く「人前式」という文字を見て、突然関係者宅に聖教新聞が現れた理由を理解できましたが、それが普通の式とどう違うのかという事はわかりませんでした。よく考えたら、私はチャペルという建物に始めて足を踏み入れたので、比較対象がなかったのです。巫女さんがいる式にしか出たこと無いもんなあ。で、そんな事をぼんやり考えながら適当に写真をパシャパシャと撮っていたのですが、後方の席から聞こえる撮影音がやけに響くのです。私が使っているのは普通のデジカメ。これは撮影音は特に聞こえません。携帯と違い、明らかに「撮影してますよー」という事が分かるので、盗撮防止機能が必要ないからです。で、その場で撮影していた他の方々、その方々の大半が手にしているのは携帯電話。そう、カメラ機能の作動音が響いているのです。一台や二台だとなんという事はありませんが、二桁を超えると素晴らしいハーモニーを奏でてくれます。『かしゃっ』『ぴぴっ』というシンプルな音の他に『ぴろりろりーん』なんて豪華な音も聞こえます。ひょっとして、これが人前式の特徴というやつなんでしょうか。「神前式だと静粛にしないといけないからあんまり音が聞こえないけど、そうじゃないんで電子音ばんばん」とかそんな感じで。


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