「人間が三人集まれば派閥ができる」なんて言葉もありますが、何人いるのかわからない雑文書きたちの中にも派閥というものはあります。例えば牛丼教とカレー教とか。あまり、派閥っぽくない気もしますが。だって、派閥と言ったら、こう、離合集散とか権謀術数とか、そういうおどろおどろしい四文字熟語が似合いそうなのに、
「牛丼はおいしい」
「カレーはもっとおいしい」
「なんだと、もっともっとおいしいぞ」
という微笑ましいような光景しか浮かんできませんから。

それはさておき。私の場合は消極的カレー教徒とでも言いますか、どちらかと言えばカレー好きな方です。カレーの添え物といいますと福神漬けか、はたまたラッキョウかと言われますが、こちらは積極的ラッキョウ派です。どれくらい積極的かといいますと、自分でラッキョウを買ってきて漬け込むくらい積極的です。さすがに栽培するには至っておりません。

事の起こりは一年前。「今夜はカレー」との情報をもとに、息子を連れてラッキョウの買出しに行ったときのことです。まだ当時は自ら漬け込む事は行っておらず、店で漬け込まれた物を買う日々でした。多くて安けりゃよし、という観点からその日購入したのは塩ラッキョウ1kg。ええ、気付かずにそのまま食べてしまいました。なんじゃこりゃ、と。

ラッキョウが入っていた袋をよく見てみると、「美味しい漬け方」なんてものが書いてあるではありませんか。つまり、あれか。これは漬け込む前の代物か。それに気付かずに買ってしまったのか。結局、その晩はラッキョウ無しのカレーを食べる事になってしまいました。ラッキョウあるのに。買って来たのに。

漬け込んでから食べられるようになるまでさらに数日を要したわけですが、冷静に考えるとコストパフォーマンスは非常にいいわけです。多少の手間をかけるだけで、漬物用の容器いっぱいのラッキョウが手に入るわけです。折角だからもうちょっと漬け込んでおこうと思い店先を探しましたが、どこの店からもなくなっています。どうやら時期が過ぎてしまったようです。しかし、諦めきれない私はGoogle様にお願いして検索してみることにしました。

その検索によって分かった事は二つ。一つはどうやら特定の時期にしか漬け込む前のラッキョウは販売されていない事。どうもラッキョウというものは、そのまま売るか、はたまた漬け込むかのどちらかでしかないようで、販売時期を過ぎてしまうと漬け込んだ後のラッキョウしか手に入らないようです。ただ、自分で漬け込む事を考えるとこちらはやや割高感があります。中国産のラッキョウ1kgなんて数百円で手に入るというのに、漬け込んだ後のラッキョウは下手すれば100g程度で数百円になります。

もう一つは、ハンドルネームに「らっきょう」と付ける人は意外と多い、という事。いやまあ、単純に「らっきょう 販売」だけで検索するほうも悪いんですが、この場合あちこちの掲示板が引っ掛かったりします。で、そんな所の何に引っ掛かるかというと、殆どが「投稿者:ラッキョウ」な書き込み。お前、何を考えてそんな名前を名乗っているのか、もしやラッキョウ教徒ですか。福神漬け派を倒すべく日夜暗躍……って、悪役にふさわしいのはどっちだろうか。福神漬けは「福」と言うくらいだから正義だろうか。すると、やはりラッキョウは悪役か。うむ、頑張れラッキョウ教徒。

そんな事とは関係なく、今年は無事に2kgのラッキョウを確保できました。息子と一緒に塩漬けから漬け込みを行い、「ラッキョウ食べたい」とねだる声に負けて食べさせてみて「おいしくない」と言われてみたり、そんな手間をかけながら今年の分のラッキョウが完成しました。ラッキョウ教徒に認めてもらえるかは分かりませんが、今年はこれで戦い抜きます。


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