何度かネタにしているMagic: the Gathering(M:tG)。あのゲームの知識がない普通の人にとってはさっぱりわからないことでしょう。ええ、私もそう思います。

全然知らない人から見ると、あんな紙切れが何千円もするという事が信じられないのではないかと思います。しかも、実際の対戦風景を見ると、カードの一枚一枚に透明の袋を被せてプレイしている人さえいます。わざわざそんな手間をかけてまで楽しいのか、と思われる事でしょう。確かに、カードの一枚一枚に透明の袋、カードスリープをかけていく作業は面倒なものです。質の悪いスリープを買った場合は、なかなか上手く入っていかなくてイライラします。しかし、人によってはその作業を怠ったがために悲劇に見舞われた者もいるのです。これは、そんなお話です。いや、私の間抜けな失敗談なんですがね。

私に、そして私の友人達にカードスリープをかけるという習慣が無かった頃。もちろん裸のカードでゲームを行うため、紙製のカードは徐々に劣化していきます。ちょっと印刷が剥がれたり、ちょっと折り目がついたり。公式な大会ではそんなカードを使っていると反則負けになりかねませんが、所詮は身内の楽しいゲーム、気にすることなく日々対戦に励んでおりました。学校での休み時間、週末の友人宅、風呂に入ってはカードの組み合わせを考える、そんな日々を過ごしていました。そう言えば、某高校の弓道場で対戦した事もあったっけ。他人の目を気にしてなかったなぁ。

で、その頃の私の主要交通機関は原チャリでした。300円程の出費で約100km走るので、余分な金があれば全てカードにつぎ込んでいた私にとっては非常にありがたいものでした。わざわざ福岡県久留米市まで原チャリで移動して電車代を浮かせた事もあります。往復1200円がガソリン代300円程で済みました。体力的にちょっと堪えたので2度目はありませんでしたが。

その日も原チャリで友人宅へ遊びに行ってました。「花火大会をするから来い」ということなので、いつものおもちゃ屋で花火を買い、カードと共に原チャリに詰めて移動しました。花火大会と言っても、血の気の多い若者が集まってるので無傷で済むはずがありません。主兵器はロケット花火、打ち上げ花火は使用数限定というルールの下、撃ち合いの始まりです。前年は枯れ木に誤射した挙句、木が燃えそうになったため休戦して消火活動にあたる羽目になったりしましたが、今年はそのようなアクシデントも無く無事終了しました。至近距離からロケット花火3連正射を行ったとか、闇と煙にまぎれてすれ違いざまに蹴りを入れたとか、そんな事を無視すれば、ですが。怪我人が出なかったのが不思議です。

さて、花火大会の後はだらだらとM:tGのデュエル大会。お菓子を食べながら、ジュースを飲みながら眠くなるまで対戦してました。悲劇はその翌日、帰宅中に起きました。

他の皆がバイトや部活で先に帰宅し、私が最後まで残ってました。原チャリにカードと、飲み残したジュースを入れて帰宅しました。その友人宅からの帰り道は舗装されていない個所があり、がたんごとんと揺られながら帰っていきました。帰宅して原チャリのメットインを開けた私。そこに広がっていた光景は。

見事なまでにこぼれていたジュース。そしてびしょびしょになっていたカード達でした。しばし状況を把握できませんでしたが、このままではまずい、と救出活動を開始します。一枚一枚タオルで拭いて乾かさなければいけません。しかし。ああしかし。前日の過労がたたって、途中で眠り込んでしまいました。目が覚めたときには時既に遅し。びちょびちょだったカードは完全に乾いてしまい、ジュースの糖分で完全に固まっていました。もう、どうやっても剥がす事ができません。目の前のカードの束は、ゴミの束と化してしまいました。せめて我が手で引導を、と焼却処分しました。ええ、数々の貴重なカードたちはゴミから灰になってしまいました。

もう二度とカードゲームはやらない……と誓う事ができれば立派だったのでしょうが。その翌日。なけなしの万札を握り締めた私はいつものおもちゃ屋で、買えるだけのカードと、そしてカードスリープを買っていきました。二度とあのような悲劇に遭わないためにも、これからはカードスリープに入れよう。そう思ったのですが、当然あれ以降、カードにジュースをぶちまけたという間抜けな事故には遭遇する事はありません。あの事故が無ければ「カードスリープなんて面倒くさい」と言っていたのかもしれません。しかしですねぇ。使い込んで愛着が湧いたカードを廃棄しなければいけない、という事故に遭遇しないためにも、そしてその後のヤケ買いを防ぐためにも、ちゃんと自衛しなければいけない。そう思いました。どっちかと言うと、ヤケ買いのほうが痛かったですし。


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